どうでら井戸端ドタバタ会議




 あー……こんちはぁ、「どうでらぇ」です。
別に覚えなくていーよー……どーでもいいし。
 えー? うーん、変な名前―かなぁ? 妖怪なんで変もなにもわからないけどねー……まーどーでもいいけど。
 ぼかぁつまり、妖怪なわけでー、「どうでらぇ」なんだけどー……特技は「どーでもいー気持ちにさせる」こと。というかどーでもいい気持ちのシューゴータイがぼかぁなんだけどさぁ……うん、まったくもってどーでもいー話。
 うーん、そんなぼかぁ最近どーでもいい加減が半端ねーの。どーでもいーと思うことがどーでもいーとゆーかぁ、そもそもどーでもいーって言葉もどーでもいーとゆーかぁ……。このままじゃぼかぁ霧状妖怪になってしまうなー。ぼかぁ気分で体が液体になったり、固体になったり空気になったりと色々変わるんで。……まぁどーでもいーかぁ。

 で、君はミーを呼んだわけだね?

 あー……バクシューだぁ。夢食い獏のバクバクシュー

 悩みがあるようだけど、どうしたんだい。どうでらぇのくせに悩みなんて……病気だね、君

あー、てゆうかぁどーでもよかったのに来たのかぁ。お前暇だなー

 暇も何もミーは獏の仕事真っ最中だし、というか相変わらずドロけてますな。今回はアメーバ状の体かい。というかミーは今君の夢の中にいるんだけど

 あー……それがどーしたの? どーでもいーけど聞いてみる

 十日間も寝ている君の方がミーは暇だと思う

 あ……あぁー……あー……………………
 
 ……なんだい? そんな口をぼかっと開けたままで。まるで「デカ版ぷよぷよカッコ顔の半分は口です」みたいだぞ

 あー……なんかぁ言おーとしたけどー……どーでもよくなった

 ……相変わらずだね、君。

 てゆーかなー、最近太りすぎてー困っちゃうー

 女子高生みたいな口調だな

 あーそー。と、ゆーのはさー……

 運動不足かい?

 ちげぇよ。

 じゃあ食べすぎ

 それだよー

 それなんだ

 うん。

 というか君、発酵してきているよ。今度は蒸しケーキの体かい。しかも黄土色の

 「どうでら七変化」って言ってー。どーでもいーけど

 「どうでら八百万変化」とミーは命名する方がいいと思う

 あー……どーでもいーよそんなの

 君が言い出したんだよ

 あーそー……そういうことにする。どーでもいーから

 あはは、ミーもどうでもよくなってきた。あやはや、君の体、五段腹の肉人形に戻ってるじゃないか。あの君のフォーマルスタイル。……でもなぜにぬいぐるみサイズなんだい?

 ちょっと調子が戻ってきたーみたいなー? けどまだふちょー

 そうかい。今回も顔の部分の穴が開きすぎだよ君

 そーかー。じちょーする? でさーこうなった原因はさー、最近「どうでらぁ魂」の人間が多くなったわけでさー

 つまりダラケとかヤル気のない人間が回りに増えたということか。それでそのダラケを食べすぎたということかい

 そうでさー……終いにはぼかぁ新技使えるようになってきたー。ほら……ぼんっ

 やや、君、分身ができるようになったのかい

 とゆーか分裂―

 ああ、どうでら分身が5つも……。いや君ら同時に同じことしゃべるのかい

 ああー……というかー処女ジュタイーって言うのかなぁ、これー

 君、一応男じゃなかったっけ?

 ぼかぁなんでもなれるからさー。つまりミミズみたいなぁ。まーどーでもいーけど

 で、君が話したいことってなんだっけ?

 あー……別にどーでもいーよ。

 どーでもいいのかい

 うん、ぼかぁそれよりも眠たくなってきたよ

 え、君、十日間寝たばかりだろ?
 
 そんな些細なことはどーでもいーの。ようはぼかぁ眠い。あー……寝るのもどーでもいーなぁ

 ミーは君のマイペースがうらやましいよ

 ぼかぁ「どうでらぇ」だからさー。でもこんなばかぁ悩みもあるんだー

 そう言えば聞きそびれたけど……なんだいその悩みって

 この頃太っちゃって困っちゃうー

 いや、それさっきもミー聞いたよ?

 でさぁ、さっきも新技見せたけどさー実はさー

 ん? それ君の分身の一人だよね、あ、他の分身消したの? ってこの分身だけ一回り小さくないかい?

 あー……こいつがなー……

 『ドーデラエー!』

 ……

 ……

 ……今ものすごく高い声が聞こえたけど

 うーん、なんかねー別人格ができたみたいでさー……むしろこれってぼかぁの子どもーになるのー?

 君に……子ども

 いやぁ実はさーこの子だけじゃなくてさー……

『ドーデラエー!』
『ドーデラエー!』
『ドーデラエー!』
『ドーデラエー!』
『ドーデラエー!』
『ドーデラエー!』
『ドーデラエー!』
『ドーデラエー!』
 
…………

 たくさんできちゃったーみたいなー? どう思うバクシュー?

 とりあえず……ミーは妖怪相談所に行ったほうがいいと思う!

* * *

「と、言うことでミーはどうでらぇとその他分身たちを連れて来たということになる」
 所は小さな診療所みたいな所。
 イスに座ってそう語ったのは虎とも猪とも豚とも象とも似てる、妖怪獏、バクシュウであった。
「と、言ってるけど俺どうしたらいいんですか〜邦雄さんー!」
 そばで小学生くらいの少年が心底どうしたらいいかわからずに目の前の青年に聞いた。そんな少年は本当に正直泣きそうな表情を浮かべている。その彼の頭の上には小さなぶよぶよした人型をした肉の塊――つまるところ、「どうでらぇの子ども」の一匹がたれパンダのように乗っかっていた。
 よく見るとその部屋の中にはその小さな「どうでらぇの子ども」で溢れていた。ある者は机の上、窓のふちに乗っかっていたり、床にのべっとへばり着いたり、達磨のように重なり合ったり……とりあえず右を見ても左を見て彼らがいた。
そのうち一人人間の子ども大の大きさのどうでらぇがいた。それが獏のバクシュウが話していた妖怪どうでらぇらしい。
「いや、なぁ……」
 少年に泣きつかれた青年は頭をかくと、視線をどうでらぇに向けた。
「って言われてるけど、どうでらぇは実際どうしたいわけかな?」
そこには獏のバクシュウの横で小さなドロ人形もとい、粘土で作った人形みたいな「どうでらぇミニ」十二体を相手にするどうでらぇがいた。
 どうでらぇはしばらく沈黙すると、青年に向けて大きな口(口と思しき穴)を開いた。
「どぉでらぇーどぉでらぇーどぉおでぇらえぇ」
「ああ、どうでもいいけど、どうでもよくない事態になりつつあって困ってるのか」
「……って邦雄さん流石ですね、俺には「どうでらぇ」としか聞こえませんよ!?」
 なるほどとうなづく青年のそばで驚きを隠せない少年。そして「どうでらぇミニ」数匹に遊んでと囲まれるバクシュウであった。





 

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