おまえとこいつときみ4


4「ふん、お前の戯言には飽きた」(妖魔×妖精)


「フン、おまえのザレゴトには飽きた」
「な、なんでぇ〜」
 ちょっと冗談で言うと、妖魔が泣きべそをかき始めた。妖魔が遊ぼうと駄々をこねるから、さっき空を飛んでたときに天使とアヤカシが言い合ってて、聞いた言葉を真似しただけなのに。
 音が出るほどぽろぽろと涙をこぼす妖魔はまるで小さな子どものよう。幼児特有のしぐさである、両手でほっぺたをこする行為がそれを助長させていた。いや、実際外見()幼いんだけどね。
 数秒たっても泣き止む気配もなく、ぽろぽろと泣く妖魔は次第にひっくと嗚咽まで出し始めてこっちを見つめてくる。
「……」
 ちょっと罪悪感にかられたあたしは妖魔の頭をなでてやった。
「冗談だって」
「でもヨウセイちゃん。ちょっと、ホンキだったでしょ」
 疑い深そうに向けられた目にあたしは素直に答えた。
「うん」
「…………」
 あちゃ? なんかまた泣きそうな具合に顔がゆがんでるよ?
 あわてて話を別のことに向けることにして、笑顔で妖魔に話しかけた。
「そう言えばさ、さっき天使とアヤカシがまた言い争ってたよ」
「またぁ? アクマちゃんのはなしでー?」
 思惑通り妖魔は泣き止み、興味を引かれてこっちを見上げた。でも、やっぱり少々むすっとした表情。妖魔は悪魔と仲がいい。だから悪魔のことでしばしば言い争う天使とアヤカシに、妖魔は気が気でないらしくこういった話には食いつく。
「いんや。今回は天使の性格全般についてらしい……かな?」
 上空を飛んでいたときに聞こえてきた言葉を思い出しながら言った。
 ん? そう言えば、ザレゴトって意味が二種類あるっけ。戯言と戯事。まぁ多分天使が言ってたのは前者のほうだろうけど。妖魔に言うのなら、後者になるのかな? 妖魔の行動幼すぎるし。そう思いながら、まぁいいやと流すことにした。
「そーなんだぁ。テンシのあの性格はぼくもモンダイだとおもうよ。どっちでもいいけど」
 妖魔の性格もどうかと思う。ま、なんだかんだと言って仲いいんだよな、天使とアヤカシ。だからあたしらが杞憂することでもないことは知っている。
「んじゃ、今から悪魔んとこ行くか」
「うん! アクマちゃんとあそぶんだ!」
 妖魔に手を引かれながら、あたしはやれやれと足を進めた。