「きつきつきぃつぅ〜」 「わお、もろぐっさぁ」 隣の彼女と一緒になってうひゃ〜っと胸を刺されたかのように押さえた。アヤカシはなんて痛烈な言葉をお見舞いするんだ!それって天使にしたらものすごい、ぐさってくるよ。 森の探検をしようと妖怪の友達――隣の彼女を誘ったところ、とんでもないところに出くわしちまった。まさかあの噂の三人のうち最悪の組み合わせのアヤカシと天使の口論の場に会うとは……。インテリな天使と飄々としてるアヤカシ。結構性格が合わないんだよねー、友達一応やってるみたいだけどさぁ。 「それにしても『自分のカラに閉じこもうとする』かー……」 オレは苦笑した。それを隣の彼女は考え込むように腕を組んだ。 「誰しもカラはあるよね、天使のはコンクリートでできてそうだけど」 その言葉にオレはうなづいた。 ヒトは誰しもカラを持つ。まわりのヒトの言葉から身を守るカラ、自分独自趣味の世界としてのカラ、世の中をうまく綱渡りするための心の戒めとしてのカラ、思考の世界のカラ、過去の傷から自分を守るカラ セカイヲシャダンスル ― 殻 ― それはいいことも悪いこともある。無意識のことも意識的なときもある。居心地いいことも悪いこともある。でも…… 「おいこら、そこのヒト。自分のカラにこもるな」 急にこづかれた。 見ると彼女が少し膨れた顔している。 「私を差し置いて勝手に自分の世界に行くな」 そう言うと再び彼女はみぞうちをなぐろうとした。もちろんガードしたよ、オレのほうが反射神経はい−んだからね。同じ妖怪でもこっちは獣型だからな。 そんな彼女は少し不服そうだったけど、再びアヤカシ達を見た。オレも同じく視線をそちらへ向ける。まだ口論は続いてるみたいだ。結局、オレらは気になるんだ。アヤカシも天使も仲間だから。 たまにカラから出てみたらいいと思う。世界ってーのはそんな狭くないしつまらないもんじゃない。初めの一歩は怖くて、オレだって今でも羽は持ってるとは言え飛ぶときはふと怖くなる。いつ、急に羽が言うことを利かなくなるんじゃねーかって。 だけどいるじゃんねー?近くに支えてくれるヒトが。そんなんいないってヤツいるかもしれんけど、本当は気づいてないだけかもじゃん?それにヒトってそんなに弱くできてない。 「とりあえず天使がんばー」 「んじゃ私はアヤカシがんばー」 オレらは小声でエールを送った。結局オレらは気になるんだ、あいつらが。友達だしな。 それに見てたら結構面白いしさ。 |