「あいやいやぁ〜、またやってるっスねぇ」 ぴくぴくっと耳についてくる声にオレっちはあくびをしながら笑みを浮かべた。 今日はなんともいい天気で、風の精霊も気持ちよく吹いてるし、木々もはしゃいでる。目の前の泉もご機嫌なご様子で流れてるし、鳥たちもさえずっている。 その上ほほえましい天使とアヤカシのじゃれあいまで聞こえてくるもんだから和やかっスねぇ、ホント。 「ダ、ダ、ダダダダダイジョウブデスカナァ?」 ふいに頭の上に乗っかっていた魔物がぷるぷるふるえながら言った。某ぷぷるぷるどっぐに似ていてちょっちかわゆい。ま、この子の場合、全身まっ黒くろのす けだけど。 「大丈夫っスよ。マモンは心配性っスねぇ」 「天使、ワタクシニガテデスンデ」 小声で恐る恐ると言った感じで答えるマモン。こんなに離れちゃあ天使に聞こえるわけないのにね。本当に彼がいないかきょろきょろとあたりを見るマモンは ホント、心配性と思うっス。 実はオレっちもマモンも非常に耳がいい。オレっちらの近くにいる他の動物でさえ、マモンの様子に顔をかしげるような表情をしている。つまり、「聞こえて いない」んスね。それほど天使のいる場所とは離れてるんス。だいたい、湖7っこ分くらいの距離? オレっちらは山林の中腹にいて、天使たちは森の真ん中よ り下っかわにいるみたいっスから。 マモンは仮にも一般悪魔の力を引く魔物なためか、「言葉」には敏感。特に意志の強い者の言葉は。その上種族柄でもマモンは天使をひどくオソレル。あ、ちな みにどっちかというと畏れる方っスね。あ、でも恐れもするっスね。 「じゃれて、テレて、かわゆいとオレっちは思うんスけどー」 どうどうとなだめながら言うと、とんでもないというふうにマモンはブンブンと首(?)……体を振ったもしくはひねった。マモン、そのうち体がスリムに なっちゃうかも。 その時 『黙れ』 「アヒィィィィィィィッ」 天使のそう言う声が耳に入ったかと思うとマモンが自分自身に言われたかのように恐怖畏縮し、慌ててオレっちの毛の中に隠れた。ちょっと天使とアヤカシの じゃれあいが熱を上げてきたかな。 「マモンってホント、おもしろいっス」 マモンがぶるぶるぶるーっっと何回も悲鳴を出しながらオレっちの耳の間にうずくまるのを感じながら、自分はのんびりと泉の水を飲んだ。うん、やっぱりひ んやりしておいしい。それにちょうど温かい日がさしているおっきめの岩がある。なんて昼寝にナイスなスポット!! よし、ここで昼寝することにしよう。 「マモンー、水飲むといいっス」 「ワ、ワタクシハ、ソソ、ソソンナ、オソレオオイコト、ヲイッテマセン!?」 「そうっスねぇ、マモンはなにも言ってないっスよー。あとオレっち今からここで寝ることに決めたっスから」 「ソンナァァァ!!」 |