無人島漂流サバイバル戦記

〜またの名をほのぼのわくわくキャンプ〜





第二話 生き抜く糧 それぞれの選択
     
(サバイバルになってない そして頑張れ)



「島、か。無人ならいいんだがね」
 デュークがつぶやいた。その視線の先には覆い茂る、何やら変わった樹木の生えた森がある。微妙に「うけけけけ」と猿だかカエルだか微妙な鳴き声が微かに聞こえる気がするがあえてスル―する。おそらくあれは人ではないだろう。というかむしろ森ではなくジャングルといっても過言じゃないだろう。
「さて!あっしらはどうすればいいさね?」
 少し状況を楽しんでいる様子の覚は皆を見た。それにまず先に昇が口を開ける。
「無人島だよな……水源は」
 そこで昇の視界に相変わらず黙って皆を見守る青色の青年が入る。
「水の属性王さんで確保できるとして……」
「食糧、だな」
 息をつきながらの昇の言葉の先を答えるデューク。その言葉に二人の間に重い空気が流れる。少し先の得体のしれないジャングルから今度は「うほほうほうほーん」とこれまた奇声が聞こえてきたからだ。明らかにあの中に入ったら何かが起こること間違いない。
「食料か……人は色々大変だな」
 そんな彼らに水の属性王労わるような言葉をかける。彼は食べるという行為を必要としない。しかし人間には食は不可決のことだ。しかしあえて人と言ったのはその他二人(+一人)が昇とデュークと比べてあまり悲壮なオーラを出していなかったからか。うーん、それは神のみならずわからない。
 件の二人(+一人)はというと、妖怪の方は人間観察をエンジョイし中。もう一方はというと……
「うーん、土ならヤオ様の領域だけど」
 少し思案顔で気楽な様子でフェイは言った。その言葉に彼の中の土の神が不機嫌なオーラを纏い始めたのに気づく。
「ヤオ様?」
― ……面倒くさい、呼ぶな馬鹿 ―
 再び首をかしげるフェイに心の中で言う土の神。
「あぁ、食べ物ならあっし自然育ちだから任せるさね」
 ジャングルの中の樹木が動き出したような気がして考え込んでいた昇とデューク、そしてそれを見守っていた水の属性王が覚の言葉に振りかえった。
 それに思い出したように手を打つと、フェイも彼らの方へ向いた。
「果物系なら、土地勘あるしいけるぜ?」
 土の神の加護付きならこれほど心強いことはない。一同の空気が少し和らいだ。これで主な心配ごとはほぼ解決したということだ。無人島(たぶん)に漂着して20分足らず、なんてメンバーだ。
「贅沢を言うなら屋根の確保ってところか」
 あまりに肝心な問題が早く解決してしまったので、デュークはしばらく他に何かないかと頭の中を整理しながら考えると、呟いた。
「贅沢じゃないっすよそれ超重要」
 それだ!と言わんばかりにデュークに同意する昇。現代っ子な彼が屋根なしの野宿など考えられないだろう。流石このメンバーの中で唯一昇と同じ普通(?)の人間なデュークに、彼は感心した。
 が。
「あぁ、そんな細かいのあっしはできんさねぇ。木の上で十分寝れたしなあの頃は」
「屋根かー、俺も木の上で慣れてるしなあ」
「雨が降らなければ、屋根なぞなくても問題はないんだがな」
 覚に続いてフェイ、そしてデュークさえも屋根なしオッケー宣言をしていた。昇はこの時改めて彼と彼らの間の文化や人種の違いに頭を抱えた。
 すると、後から水の属性王が静かに口を開いた。
「天幕ぐらいなら水で張れるが……」
 救いの手、来た。
「……万能じゃね?」
 人外でも、非常識人(神?)じゃない水の属性王を昇は今度は尊敬のまなざしで見た。
「流石水の属性王!」
 それに賛同する覚とフェイ(土の神は別にどうでもいいと思ってそうだ)、そしてマジかという視線を送るデューク。そんな一同の熱い視線にしばし黙ると、水の属性王は首をふった。
「俺が支配できるのは水だけだ。万能ではない」
 しかしそれはやはり水ならどんと来いということ。これで水飲み放題、それに濡れて風を引くと言うことはなくなった。同時に雨も滴る良い男も見れなくなったわけだが……この際我慢だ。
 一同に安堵の空気が流れる。
― ……俺達、遭難したんだよな……? ―
 不意に疑問に思ったデュークをのぞいて。改めてよくよく考えるとおかしいこの状態。あまりにもよくできすぎている。頭のすみで不意に浮かんだ疑問に頭を抱えて考え込む海賊。
― 諦めるさね、平凡な遭難は ―
 そんな彼に気づいたのは覚だけだった。しかし思考を読まれた上、念話で励まされても彼の気分がよくなることはなかった。この奇天烈な状況にため息を禁じ得ない海賊だった。
「で、野獣対策……は」
 そんなデュークをよそに、昇は次なる問題を考えていた。しかし彼は目の前にいる人物を見てその問題を考えることを止めた。
「いらねーな……戦力的に……」
 ふっと諦めたような笑みを浮かべると自嘲気味に言った。
「……野獣……? あ、何か嫌な予感……」
 しかし昇の言葉に顔を見る見る青ざめるフェイ。実は戦闘には彼は向いてないようだ。そんな彼の後ろからぽんと肩に誰かが手を置いた。
「野獣は気にすることねぇさ。……獣でどっちが上かわからせたらいい♪ 」
 そこには上機嫌な覚が満面の笑みを浮かべていた。その言葉に実際戦えそうなデュークは内心「この娘狩りできるのか、って人じゃなかったか」などと思いながら黙って傍観。別に獣に襲われてもそれ以上に強い水の属性王はある意味同意して黙っていた。
 しかし彼女の笑みにちょっと見惚れていたが、気を取り直したフェイは力なく答えた。
「俺、上に立てる自信ねえ……」
「立つ以前の問題だぞこちとら。現代っ子なめんな」
 そしてそんなそばで怒気をはらませながら言う昇。そのとおりだ、君達は間違っていない。普通はこの反応が合っている。しかし色持(放送規制ニカカリマシタ)の昇君ならなんとか色のちか(放送規制以下略)ででき(放送規以下略)……失礼。しかしどうやら「現代っ子なめんな」という言葉が少し覚の糸に引っ掛かったらしい。
「……って現代っ子なら」
 一歩昇に近づいて、彼の頭に手をおくと覚はにっこりと笑った。
「それなり体なり頭なり使うさね〜」
 ね? と頭を撫でながら言う覚に昇は少し固まった。彼女のその瞳が一瞬、「かあちゃん」めいたなにか逆らえないような力のある目だったからだ。流石子ども一人育てた者だ、貫禄がある。
「意外と厳しいんだな、覚」
 目を瞬かせながら彼女を見るフェイ。それに昇から離れると、覚はくるりと振り返りながらへらりと笑った。
「あっしは馬鹿は好きだけどやる気のない馬鹿は嫌いさね」
「わ、わりい」
 さらりとだがストレートにある意味キツイことを言う覚。無意識に自分が馬鹿と認めているフェイは思わず謝った。
 それに頭をかしげる覚。彼のことを言ったつもりではなかったから謝られた意味がわからなかったからだ。
― って言われてもな…… ―
 少し怒られたような感のある昇は頬をかくと彼らの様子を見ながら考えていた。少し自分の発言に反省しているらしい。まぁ気にすることはない。言葉遣いが多少母性に引っ掛かったのと、少し覚に気に入られただけだよ。と神の一人ごとは自重しよう。
「じゃあ……狼煙とかは? 必要だよな」
 やる気を出してみた昇は不意に思い出した。
 それに忘れていたとフェイは手を打ち、水の属性王は感心したようにうなづいた。そして様子を見ていたデュークが立ち直ったのか、彼の言葉に手早くまわりを見た。
「火打石と燃やすもの、か…… 」
「火おこせるもん探すか」
 そう言いながら昇は手当たり次第、近くの茂みをがさごそしだした。やる気になればできる子だ。
「それから薪というか枯れ葉や枝も要るだうな」
 昇に続いて茂みの中を探してみるデューク。しかし。
「と言っても……枯れたものがあるかどうか 」
 苦い表情であたりを見るデューク。浜辺の近くである。水分が多いものばかりだ。むしろ濡れている。
彼の隣りで妙にびろーんと伸びた葉っぱのようなものを掴むと昇は考えた。
― スコールでも降ったのか、湿ってるな……乾かすには……干せばいいのか? ―
 見れば見るほどわかめに似ている葉っぱだ。それに不意に彼の頭にある言葉が掠めた。
「天日干し……?」 
 なんだかなにかが違う気がしてならない昇をデュークはため息をつくと、頑張れの視線を送った。 
「あ、じゃあその辺は俺……というかヤオ様にまかせて」
 今こそ俺の出番とばかり手を上げるフェイ。そう、というか土の神の出番。それに言って気づいたのか、言葉の語尾が落ち込んだ。
「森に入るなら一人にはならない方が無難だろうな」
「あ、確かに獣が出てきたら、俺じゃ勝てねぇよ……」
 ちらりと森、もといジャングルを見る水の属性王の言葉にしゃがみこんで更にうな垂れるフェイ。頑張れフェイ。
「あーそうさねぇ……枯れ枝枯れ葉」
 そこで少し黙って座り込んでいた覚が不意に腰を上げた。
 そして額に指を当てる。
「了解」
 途端、後ろのジャングルから鳥が数羽飛び立った。
 そんな覚を不思議そうな顔をして見上げるフェイ。目を細めて彼女を見る水の属性王。デュークは一瞬こちらに顔を向けたがすぐに戻した。昇は乾燥方法に没頭中。
 覚は精神波を起こしたのだ。
 しかしそれに気づいたのはおそらく、土の神と水の属性王のみ。フェイは微弱ながら気を感じた程度でなにかわからなかっただろう。
「……んじゃあっしここの獣んとこに行ってくるさね。あ、あっしのことは気にしねぇで」
 背伸びをしながらのんびりと歩きだす覚。それを見る一同。
「……まぁ、奴は放っておいても大丈夫だろう」
 水の属性は呟いて元の葉っぱ探しの作業に戻った。
「炙れば……あでも火がそもそもなくて……っていうか火をおこすために集めてるんだから……」
 乾燥方法に没頭中な昇はというと、なんだか思考が堂々巡りになっていた。覚が離れて行ったことすら気づいていない。ファイトだ。
「あ、そういやなにか肉系でリクエストあるかねぇ?」
 突然戻って来た覚に驚いて後ずさりする昇。思考に没頭したのもあるが、瞬間移動なみの速さで帰ってきた覚にはデュークも少し驚きの表情を浮かべた。水の属性王にいたっては、さきほどの精神波といい妖怪であるということもあってもはや驚かない。
 本日何度目になるかわからないため息をつくと、投げやりにデュークは覚に言った。
「食えればいい 」
「あいよぉ。では、あっし行ってくるさねー」
 そう言うと覚はデュークに手をあげながら再びジャングルへと歩いて行った。
「……あいつ、取ってくる気か?」
 すんなりと億さずジャングルに向かって行く覚に、デュークは半ば呆れていた。そして少し自分の言動に後悔した。彼女なら食べれそうならどんなものでも持ってきそうだったからだ。しかしもうそれは後の祭りだ。
 とりあえずもう覚の存在自体が想定外な昇は、もはや現実逃避に近い形でさっさと葉っぱの乾燥方法を考え始めていた。水の属性王は黙ってとりあえず葉っぱを集めている。
 そしてフェイはというと、始終ぼーっとしていた。しかし覚を見送って数秒ののち、はっとした。
「わ、覚……! お、俺も探してくる! 起きてヤオ様!」
 そう、自分とは関係ないと思っていたが、よく考えたら食べものを取ってくる係りは自分(土の神)だったことに気づいたのだ。慌てて自分の中の土の神に呼び掛けるフェイ。
 その途端、急に不機嫌なオーラを出しまくった無表情に代わる彼。
「……だから面倒くさいというのに、あの糞餓鬼は……ブツブツ」
「一瞬で顔が変わったな……」
 彼の顔を凝視して呟く昇に気づいた土の神は彼の方に振りかえった。それに少しびくっとする昇。無理もない、フェイの顔が今では無表情なのだ。しかもさきほどと明らかに威圧感が違う。
「ああ、今は小僧の顔のままだったな(面倒だから)」
 思ったことが()に出てる土の神。怯えた様子に気づかず納得顔でうなづくと、彼は神気を纏い始めた。
「本来の姿に戻ろう」
 途端、目の前にはフェイの姿に代わって、東洋風な服装に身をつつんだ長い銀髪をなびかせた端正な顔立ちの男が現われた。これが土の神本来の姿。
「……小さいの(覚)に遅れをとるわけにいかんな。仕方ない、いってくるか」
 顔にかかった髪を払うと、土の神は前を見据えた。
「走れフェイ」
ぼんっ
「ちょ、結局動くの俺なの!?」
 土の神の姿が見れたのは束の間。すぐさま情けない顔のフェイの姿に戻ったのだった。フェイが土の神に主張するもどうやらどうしても土の神は出てこようとしない。そうするうちに覚がどんどんジャングルの方へ向かって行く。
「んじゃ、行ってきまーす……。はあ」
 諦めてため息をつきながらとぼとぼと歩きだすフェイ。
「……気をつけて……」
 それをとりあえず、手をふって見送る昇。気をつけなくても大丈夫のような気がするコンビなのは置いといて、安否を祈るのはよいことだ昇くん。デュークはというと、どう見ても狩りに向いていないフェイに憐れむような視線を送ると作業に戻った。
「……奇妙な集まりだ 」
 最後にその一部始終を黙って見ていた水の属性王がそっと呟いたのだった。

 ざぱーんと波が押し寄せる浜辺で、三人作業をする水の属性王、デューク、昇。
 先先行く覚と慌てて彼女を追いかけるフェイ。

 パーティはこうして二つに分かれたのだった。





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