第三話 静寂の浜 2
(ザ・無言の浜ww)
「……そういえば森に行った2人遅くね……?」
はたと森の方を見ながら昇が言った。今はもう普通にキャンプファイヤー状態で火が燃えている。それにしてもあれだけの気合と勢いで労働をしていたのに、彼に疲れた様子はない。流石若者。……とまでは行かないようだ。多少ぷるぷるな腕をさすりながら木の枝(ログ)を入れた。
炎がぱちりと爆ぜる。
「まぁ、そのうち戻るだろ」
少し大きな枝(ログ)をばきりとへし折ると、デュークは火にくべた。炎が少し大きくなる。それに水の属性王が多少火から身を引くと、森へ振り返った。
「様子を見に行ってもいいが……迷ったらまた面倒だろう」
その言葉にうなづく昇。
しかしそうなると、もはややることがない。
何をしていいかわからない男達は火を囲んで黙っていた。……魚でも取ればよかろうに。と、水の属性王の一人ショーになりそうな予感だなそれ。デュークが鉄砲で撃ち仕留めるのもありだが。
なんて神々の妄想をよそにどうすればいいかわからない沈黙が続く。
水をふよふよさせたまんまの水の属性王。
とりあえず、枝の模様「ログ」を「グロ」みたいだな……と思ってみる昇。
少し鉄砲で魚を仕留めようかどうか躊躇して、やっぱりやめたと手をそこから離すデューク。
沈黙。
昇はそのうちきょろきょろとまだかなーと森の方を見始めた。
けれど何回か再び森の方を見て、彼はそのうち少し心配そうな表情をした。あたりはいつの間にか夕暮れ一歩手前で影が差してき始めている。分かれてからどのくらい時間が経ったのかわからないが、少し遅い気もする。
なんだか不安になって来たようだ。昇はちょっとお祈りを始めた。
「食われてたりしませんように……」
さてどうだろう。
「遭遇するかも運だからな、狩りは」
それに対して彼ほど心配そうでないデュークがさらりと言った。経験者は言うことが違うな。というか運悪く食われて終わったらどうするんだよw という突っ込みはないのか、昇。
……なんだか余計心配になって来たらしい。顔が少し青くなった。
「あぁ。だが、神が依り代を殺すとは思えないんでな」
水の属性王の言葉にぱっと昇は彼を見た。少しほっとしたらしい。フェイのことを言っているらしい。加えて静かに水の属性王が言った。
「どちらも人ではないからな、死にはしないだろう」
それにデュークはうなづいた。結局水の属性王の認識では両方とも人外なのかなるほど。
「片方は半分人っすけどね……」
覚を思い浮かべた昇。一応彼にとってフェイは人間らしい。まぁ水の属性王は微細に神の気を感じられたとしても、昇は表面上(フェイ)しかほとんど感知していないということなのだろう……でしょうかもけ神?(聞くな)
ていうかなんつーシビアな会話。
しばらくの沈黙。
ぼとりと灰になった枝が地に落ちる。
「やっぱ神なのか……俺にとって神っていえば神社にいるみたいなのですけど、土の神さんってなんかちょっと違うイメージっすね 」
とここで土の神・イン・フェイを思い出して内心ひやっとする昇。オーラが怖いらしい。というかフェイなのに土の神なギャップが怖いのかもしれない。そして次に浮かんだ真の姿を現した土の神を思い出して少し、こっちだよなやっぱ、な感じになる昇。
しかし今一彼の想像する神とは違う感じがするらしい。
「つうかそもそも実在しないし」
無神論か。
見たことねぇのにw イコール「存在しない」とも言えるか。
「神の形も色々だからな。世界が違えば、その存在も変わる」
それに水の属性王が冷静に言う。
そして訪れる沈黙。
なかなか会話が続かんな。
「……」
とりあえず、手持無沙汰なのと話すことが見つからないのでなんとなく薪を足すデューク。すると思いついたように昇が彼に話しかけた。
「船長んところはいるんですか、神様 」
「ん?」
昇の方を向くデューク。しばし黙り込むと、彼は火を見て言った。
「一応いるっちゃいるな。会ったことはねぇが。女神ヴァルヴィアってんだ」
少し足を組み替えると息をつく海賊。
「気難しい女だよ」
「やっぱり、願いを叶える系? 」
相槌を打つと昇は少し砂をいじりながら言った。彼の指には砂がさらりと付着している。粉のような砂らしい。
「いんや、海を支配してるってだけだ。嵐を起こしたり、凪にしたり……」
「海の神か……」
その言葉にしばし黙っていた水の属性王が反応した。ちょっと興味を持ったか水よ。母なる海から水は来ているもんな。
「俺達海賊は、彼女のご機嫌取りをしながら海で生きてるってわけだ 。ま、迷信に近いけどな」
「じゃ実在の証明はまだされてないんですね 俺んとこと一緒だ…… 」
デュークとの共通点を見つけて少し嬉しいらしい昇。よかったな。
「……おそらく、神と人が共生する世界の方が珍しいだろう」
水の属性王が小さく呟いた。
そして一同に流れる沈黙。
またもや間が持たないww
「属性の王ってのは、神とは違うんですか?」
ふと疑問に思った昇。水の属性王を見つつ、火に枝を放り込む。
「俺は、そうだな……」
ぱちりと爆ぜる炎を見つめると、水の属性王は言った。
「お前達の感覚で言えば、精霊に近い 。水を司る神ではなく、水そのものなんだ 」
水そのもの。
その言葉にデュークと昇は少し顔を合わせた。
「神であれば、是非ウチの船に来てもらいたかったんだがな」
まさにという感じで言う海賊デューク。確かにいたらものすごく有難い。目が本気だ、流石経験者は言うことが違う……って切実なんだな。
それに納得顔で昇はデュークを見た。
「……ああなるほど、水貴重ですもんね 海。水ってか 真水か」
「ついでに天気も操れれば信仰したっていいくらいだ」
崇めるのか。
というか、そんなことなったらデューク海賊団最強だ。世界征服も夢じゃない。笑いながら言うが今度もまた目が本気な海賊に、水の属性王は顔を振った。
「残念だが、神とは根本的に存在意義が違うんでな……」
一応神とは違う区分にしてもらいたいらしい水の属性王。だが人間だって神様になれるんだ、水の属性王ならなれるよ。アニミズム的な観点で言うと、もう神でいいじゃねという勢いだ。
それにしても。
つまるところ飲み水も水の属性王の一部ということなのか。ってむしろ生き物全般に水の属性王が中にいらっしゃるということか!? という突っ込みを誰かしないのだろうか。
そんな神の思惑をよそになるほどという空気が彼らの間で流れた。
不意に少し遠くから砂を踏みしめる音が響いてきた。
それに昇、デューク、水の属性王が振り返る。
二つの人影が夕暮れを背にして何かを持ってやってきていた。
「ただいま〜」
片手を上げて人影が機嫌よく声を上げた。
どうやら覚とフェイ(土の神)が帰還したようだ。