第三話 静寂の浜 1
(ザ・無言の浜ww)
小さくなった二つの影が森の奥へと吸い込まれていくのを彼らは見ていた。
空には海鳥が声を上げて飛び交い、波がさざめく音があたりに響く。静かな午後のバカンス。もし、彼らが自身の意志でその無人島に来たのならば、そう言ってもおかしくはないほど穏やかな日差しが砂浜を照らしていた。
しかし。
現実は男三人の沈黙。
しばし男達は互いを見つめあって黙りこむという妙な状態を繰り広げていた。かなり気まずい雰囲気だw
「さて、こっちはどうするかな…… 」
頭をかきながら一番に口を開いたのはデューク。流石キャプテン、先頭をきる頼れるリーダー。
「……すんません俺全く知識がなくて……出来ればやること指示してもらえませんか」
「何かするにしても、この付近では出来ることは限られるな」
昇と水の属性王がデュークにそう告げると、彼を見た。
そして沈黙。
……どうやら指示を仰いでいるらしい。一番年下であろう昇、そして基本的にあまり考えない水の属性王。デュークがもはやキャプテンなのは決定。こちらを「頼りにしてるぜ!」と言わんばかりにうかがう昇と水の属性王にデュークは考え込んだ。
― 水は確保、食糧は確保中? 屋根はとりあえずよし、あとは…… ―
「とりあえず、皿代わりのモンでも確保しておくか」
とりあえず、すばやく考えるとデュークはそう答えた。それにうなづく水の属性王。
「そうだな」
「妥当なところで骨か葉っぱっすかね。木の器は時間かかりそうだし」
「でかい葉があればそれで充分なんだが…… 」
昇の言葉にデュークは顎に手を当てて周りを見た。デカイ葉っぱ、もといわかめみたいな葉っぱが昇の手元にあるのに気づく。なんだかしなびている。そしてデュークの手元には火掻き棒が蛇腹になったような枝。
……。
しばし黙るキャプテン、そしてそんな彼の様子を見る昇と水の属性王。
「それから、燃やせそうなもの……火が付いてしまえば生木でもいいだろう」
しかし一応わかめ葉っぱは彼にはオッケーらしい。ふところが広いよキャプテン、やるな。それに同意してうなづくと昇と水の属性王は燃やせそうなものを探しにまわりを見た。
しかし。
目ぼしいものは、ない。
再びの気まずい沈黙。
― サバイバルなんざ最低限しか覚えてねぇし、やるべきは連中が全部なんとかしやがるし…… ―
頭を抱えたくなるキャプテンデューク。少し部下にやることを任せっぱなしな自分に少し後悔しているらしい。こんな時こそキャプテンの真価が問われるのだぞ、ファイトだ。いかに自分が動かずにまわりを起動させるか……ってこのメンバー動かしにくいw というかそれは遠まわしに使えない奴らだと言っているのか(はっ)……と地の文で出しゃばるな神の一人。
そんなこんなでしばらく眉間にしわを寄せながらキャプテンの無言タイムが続く。それをどうすればいいかわからず、とことこと歩いて来た沢ガニを腹いせで指ではじき飛ばす昇。とぽ……と虚しく海へ落ちていく沢ガニを観察する水の属性王。沢ガニさん、海におかえり。
そんな中、不意に水の属性王はため息をつくと、つぶやいた。
「火なら俺の知り合いにそれ専門の奴がいるんだが……さすがに呼び寄せるわけにはいかないしな」
自分の力が今は役に立たないことに少し不甲斐なく思ったのか、言った彼の言葉。それにデュークは顔を上げた。
「呼べんのか? 水の」
「あぁ、呼ぼうと思えば、な。だが、奴はうるさいぞ 」
水のとかデュークさんニックネームつけるほど打ち解けてますか、というかその点つっこまないのか水の属性王とか言うことはさて置き。
これ以上人数増やしてどうするんだwww
そして「うるさい」という言葉にしばし黙るデューク。これ以上奇特なメンバーはご免なのだろう、表情から察するに。
「……うーん俺ももうちょっとサバイバルに強そうな奴と変わった方が良い気がする」
ついには表突っ込み役の昇まで申し訳なさそうに選手交代宣言をし出す。強さは問題じゃないんだよこの企画はw
流石にこの流れはやばいと気づいたのか水の属性王と昇は顔を見合わせると、気まずそうに息をついて考え込んだ。それに真剣に選手交代すべきか表はクールに、心の中では頭を抱えて考えるデューク。
そして訪れる沈黙の春。
― 間がもたねー…… ―
ズ―ンとした顔で内心思う昇。この状況どうにかしてとばかりに読者目線でこちらを見ている。諦めろ。
「ま、待つのも遭難の基本だ、諦めるか」
砂浜に座り直すと、観念したように沈黙を破ったキャプテンデューク。そちらを見る昇。近くの砂浜の窪みに出来た水たまりを見ていた水の属性王も彼の方に顔を向ける。
「やれやれ、じゃ結局火を起こす道具を探すしかねぇか」
息をつくとデュークは言った。
「原始的な火のおこし方でも試すか?」
「摩擦で、ってやつか?」
水の属性王の言葉にデュークは彼を見た。それにうなづく彼。しかし問題はどう摩擦で火をおこすかということだ。ただでさえ原始的な方法では火をつけるのに時間がかかる。それに濡れそぼっている葉っぱ(?)を燃やすのは更に大変、と言うか無謀だ。
せめて乾いてさえいれば……とこちらをあざ笑うかのようにぐねんと曲ったわかめ葉っぱに睨みつける男二人。
「あ」
そんなところで思いついたように昇が声を上げた。
「何だ?」
それに昇の方を見る水の属性王とデューク。
「火なんですけど水の王さま、そこら辺の倒木とかから水分抜き出すとか出来ませんか?」
「出来なくはないが……」
少しの沈黙の後、意味がわかりかねる様子で昇を見ながら呟く水の王さまもとい属性王。ニックネームが増えた水の属性王。昇とデュークはいまだに名前で呼ばれていないのに。
「湿ってなきゃなんとかなるかなって……なんとなくですけど 」
……。
ぽんっ
「なら、すぐ乾燥するな」
はっとしてデュークは水の属性王を見た。それに気づいたように水の属性王。
「では、やってみよう……」
さっそく例のわかめ葉っぱと蛇腹火掻き棒の枝に手をかざし、瞳を細めた。淡く手が青白いひかりを帯びる。そして気泡のように水がどんどんそれから出て来た。ぽにょんと擬音が出てきそうな水分が水の属性王の手元に集まる。最後には顔面ほどの半透明な球体が宙に浮かんでいた。
「こんなものか?」
そして振り返る水の属性王に二人がはっとして砂の上の枝と葉っぱを見る。
「おお……」
感嘆した昇の声と目を見開くデューク。
そこにはかっぴかぴになった手頃な葉っぱと枝があった。
― 便利だ…… ―
思わず心の中で思った昇だった。
「 ……あとは、火を起こす方法だな」
一つ問題が解決してほっとしたデュークは次なる問題のことを考えた。今は火をおこす器具や道具などなど。なので先ほど水の属性王が言った通り、原始的なやり方でするしかない。
― さて、どうやるんだったか…… ―
そう考えて沈黙。
勿論、下っ端にやらせているデュークが方法など知るはずがない。まだ道具があればよかったものの、無人島にあるはずもない。とりあえず彼は自分の所持物を確認するために服のポケットに手を突っ込んだ。
がさごそ。
そして出て来たのは……。
― 手元にあるバルゲルと拳銃じゃあ……火薬を使おうにも爆発するだけじゃな ―
危ないからよい子の皆さんはこの海賊みたいなことはやめましょう。そして銃は手元にあるのだな、デューク。銃刀法違反だ。まぁ海賊だから仕方がない。
「うーんと……確か小学校んときのキャンプでは……」
するとデュークの言葉の受けて、一緒に考え込んでいた昇が彼の傍らぶつぶつと呟きながら砂浜に板と棒を探し出していた。なんで都合よく板と棒があるのかという突っ込みはなしだ。
ちなみに水の属性王は火は自分と正反対の絶対苦手分野。なので、大人しく後の二人に判断をゆだねてヤドカリが動いているのを観察している。しかし何もしていないかに見えて、実は先ほどの水分を飲めるように濾過して汚れを取り除いたりしている。ちなみに容器がないので現在5つの球体に分けて自分の周りに浮遊させている。
「確か板の端に切れ目入れて棒で……」
呟いて記憶をたどりながらちゃくちゃくと装置を作っていく昇に、デュークはしばし考えるのを止め水の属性王と共に面白そうに昇を見ていた。
当の昇はというと工作に熱中している模様。
そしてゆっくりと彼は棒を回し始めた。鳥の鳴き声とさざ波の音のみが聞こえる中、かしゅかしゅという乾いた音が響く。
「……」
成り行きを見守る水の属性王。
「……」
同じくデューク。
かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ……
昇の手が一生懸命動く。
「……」
成り行きを見守る水の属性王。
「……」
ちらりと水の属性王の周りに浮遊する水の球体を見る。そして同じく成り行きを見守るデューク。
かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ……
昇の手が一生懸命動く。
「……」
成り行きを見守る水の属性王。ふわりと水の球体を動かす。
「……」
同じく成り行きを見守るデューク。黙ったまま。
かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ……
昇の手が一生懸命動く。
「……」
成り行きを見守り、ちょっと水の球体をデュークに渡す水の属性王。
「……」
渡された浮遊水に少し顔をしかめる。が、水を口に含んで……意外といけたらしい。そして同じく成り行きを見守るデューク。
かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ……
昇の手が一生懸命動く。
「……」
成り行きを見守る水の属性王。
「……」
同じくデューク。
かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ……
昇の手が一生懸命動く。
「……」
かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅ、かしゅーかしゅーかぁ……
昇の手が一度止まる。
― 意外と疲れる…… ―
微妙に息が上がるし、腕もつかれ始めた小さな運動。アウトドアは案外侮れない。しかしそれはなんだか負けたようで、昇の闘争心を逆に燃やした。
「……くっそ」
手の甲を伸ばしたりしたのち、昇はかっと目を見開いた。
そして……。
かしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅ……
かしゅかしゅスピードアップ。現代っ子の本気、出た。
「……」
なんだかすごい気合の昇に感心する水の属性王とデューク。もはや言葉もない。
これは行けるかもしれない。そんな期待にも似た何かを彼らは感じていた。
熱気が彼らの間から流れる。
ジョジ●のドドドドドドドドド並の熱気が。
そして……。
かしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅかしゅ……
……
……
……ボ!
「……点いたー!! 」
昇の歓声が響く。
空へと鳥達が飛び立つ。
ついに、ついに昇の根性が勝ったのだ。
小さな火、しかしそれはとても大きなこと。
今までになく達成感に満ち溢れた喜びの顔を浮かべる昇。とても無邪気で爽やかな笑顔だ。
……なんて、なんで感動モノの雰囲気が出てるんだ。何気にすごいムードメーカーじゃないか昇。
「これで火の方は心配ないな」
鳥が飛び立った森から視線を戻すと、水の属性王は昇に対して感心しながら言った。ただの人間が術を使うでもなく、しかも自分の苦手とする火をおこしたのだ。
「後は消えねぇことを祈るか」
デュークもよくやったと言わんばかりに昇の頭をぐしゃぐしゃと撫でてやる。
「ですね。火増やさないと…枯れ葉枯れ葉…」
上機嫌で砂浜の方に昇は振り返った。
途端。
ばささささささささあああああああああああああ!!
謎の「ログ」……という文字のような模様の入った枯れ葉大量発生。
もとい召喚。
「!?」
怖れおののく昇。
「……? 」
呆れた表情で凝視するデューク。
「……またか」
冷静に構える水の属性王。
目の前にはこんもりとわかめ葉っぱと蛇腹火掻き棒枝の乾いたものが出現していた。まるで突然空から落ちて来たかのように。
「え、何、俺が火点けたから?」
「……んなわけあるか」
葉っぱに動揺する昇に冷静すぎる突っ込み。渋いなキャプテン。神々(ログ)からのプレゼントだ。ありがたく受け取れ。
「心配するな。それは関係ないだろう」
優しく諭す水の属性王。流石水は癒し(違)