瑠璃色の道



バスに揺られて

ゆーらゆら

ゆーらゆら…


 学校の帰り道、私は待望のバスに乗っていた。すかさず早めにバスに乗ったため、無事席をゲット☆
 長時間立っていて疲れた足を私は休めた。

ああ〜極楽極楽♪


ブー、ブー

「ん?」

 通学カバンからバイブの振動が伝わった。
 カバンの中で携帯が鳴ってるではないか。この鳴り方は…さては杏ちゃんだなっ!?
 カバンを探ると携帯を手慣れたしぐさですばやく開く。

ぱかっ


…………



ビンゴ☆

 私は一人でにやりと笑った。誰かが私を見てて『うわっ、こいつにやけてやがる。きもっ』なんて思っていて、白い目で見ていても、私はにやりと笑った。そして思う存分にやけた後、メールの内容を見た。
内容は以下の通り。

『りーちゃん聞いてよぉ!また仁(じん)にいじめられた(;_;)仁がね!仁がね!私といると嫌なんだって〜(;O;)杏仁豆腐になるから…』

ふむふむふむふむ。それは由々しき事態だねっ、杏(あん)サン。

 今度は顔には出さず、心の中で爆笑。

 杏ちゃんのメールはいつ見てもおもしろい!おまけにかわいい♪だからついつい杏ちゃんからメールが来たらにやけ気味になる。
 生の杏ちゃんに会ったら是非観察してみるといい!メール以上におもしろいよっ。
 杏ちゃんは今好きな子、つまり竜泉寺仁也君に片想い(?)中。あの恋愛関係にうとい杏ちゃんがよ?最近やっと自分の気持ちに気付いたみたい(笑)

なんで『片想い(?)』って?
ちっちっちっ
あれは『片想い』なんかじゃないよ☆

『両想い』なのだ!

気付いてないの、杏ちゃんだけだろうねっ(笑)

竜さん、ご苦労様。


 私は心の中で竜さんの苦労をねぎらった。
 そして杏ちゃんに二言三言メールを送った。

『仲がいいほどケンカするんだよ☆それに杏仁豆腐はめっちゃおいしいし!』

送信。

すぐに受信。

『だよね☆私も杏仁好き〜(≧▽≦)』

返信。

『だからその内杏仁みたいに甘い仲になる事間違いなしっv('▽'o)』

受信。

『そんなぁ、照れるヨ。そっかぁ、なんか元気出た♪りーちゃんありがとー』


杏ちゃん、単純…

でもそこがいいんだっ!

 杏ちゃんの返信に満足すると、私はちゃっと携帯をたたみ、さっとスカートのポケットに入れた。

ん?

ところで今どこだ?

 ふと、まわりを見る。
 バスはちょうどある停留所に止まっていた。窓からはすぐ近くに阪急の駅が見える。
 するとドアが閉まる音がした。

パタン

………ちょぉっと待てよ?

私、ここ、降りるんデスケド?

「バス、発車します。」
「ウンちゃんっお待ちぃぃっ!」



 車内に少女の大声が響いた。



*  *  *

「ふぅ…あぶないあぶない。」

 なんとかバスのウンちゃんは止まってくれて、私は『降りそこねて余計に運賃を払わねばならない』という危機から回避した。

 バスの中の人、みんな私見てたなぁ…

 私はさっきの車内の情景を思い出した。…少し恥ずかしくなってきた。


 ………………

 まぁ…

「なんとかなったから結果オーライ☆」

 私は颯爽と駅へ向かった。

ブブー、ブブー

 またもや携帯が鳴りだした。やたらとお呼びになるね。…これは電話だな?
 私は歩きながら携帯を開いて耳に当てる。

ぴっ

「はいはーいっどなたですー?」
『…私よ。』

 耳に呆れたような苦笑が入ってきた。
 んー?今日は仕事終わるの早いねお姉ちゃん。


「あ、お姉ちゃん!早いねー!」
『今日は早めに切り上げたの。…て言うかあんた、誰が相手でもそうやって電話取るの?』

 またまた呆れたような声で答えるお姉ちゃん。なにか私、変なことしたかな?

「うん、そだよーん☆」
『そだよーんって、ねー…』
「だいじょーぶだいじょーぶ!気にすることなかれ!家の電話ではこんなんじゃないからっ!」

 見えないお姉ちゃんに胸を張る私。
 お姉ちゃんはそんな私に電話の向こうで…いいけどさ…いや、良くないけど…まぁ…いっか…とかなんとかつぶやいていた。
 すると駅への階段を降りる途中でお姉ちゃんは思い出したように言った。

『あ、そうだ。今どこにいる?』
「駅の階段を降りている所でゴザイマス。」
『いや、普通に答えていいから。んじゃ、西北の出口待ってて。今から迎えに行くから。』
「おっけーおっけー!」
 私はるんるん気分で答えると定期をすばっと改札に入れ、すぱっと定期を取った。

お迎えかぁ…



ブルジョワ?

お嬢様?


 お姉ちゃんが黒いタキシードを着てドア開け、おしとやかに笑いながら上品に車の中に入っていく自分の姿を想像してみた。

……


ありえない妄想だね☆


 私はタイミングよく来た特急に乗り込んだ。
 今度はさすがに席は空いてない。でも、ケセラセラ。西北までならそんなに時間かかんないしねっ。

 暇潰しに優等生っぽく(?)地理の教科書(妄想の続き?)を読んでいるとほどなくして西北に着いた。

うーむ…
なんと宮城はこんなものが名産だったのか!

 なんということだ、何気に地理にはまってしまい、電車から降りても改札をぬけても地理の教科書を熱心に読んでしまったのだった。

ワタクシ、文学少女ではありませんヨ?

 そこでやっと地理の教科書を閉じ、あたりを見渡した。路地に白のビクターが止まっている。あれだ。

「お姉ちゃんただいま!」
「おかえりー。」

 運転席のお姉ちゃんは後ろの席に私をうながした。ドアを開けて中に入る。

「ねぇねぇ!」
「なぁに?」
「埼玉の特産物って知ってる!?」

 私はお姉ちゃんをのぞきこむ。さて、お姉ちゃんは答えられるかなっ!?
 先程覚えたばっかの知識をお姉ちゃんは知らないとふんで聞いてみた。
 するとお姉ちゃんはこちらを向いた。またもや呆れたようなオーラが出てマスヨ。

「埼玉の特産物?どしたの、いきなり?」
「いーからさぁ、埼玉の特産物は?」

 私はずずいっと聞いた。お姉ちゃんは一間おいて笑うと、前に体を戻して車を発進させた。

「知ってるよ?」
「なにっ!?」

知ってるの!?

「なあんだぁ…ちぇっ…とは言わないデス。断じて。」
「言ってるじゃん。」

 つっこみをすかさず入れるお姉ちゃん。

「いーのいーの!所詮私はお姉ちゃんには敵わないのデスヨ。それよりも1個でも知識が増えて嬉しーのデス☆」
「おもしろい考え方ね。」
「うんうんっ。こんな1から10まで聞いたらソウメンみたく右から左へと流れてしまう私にとっては喜ばしいかぎり!」
「そうねー、喜ばしいかぎりねー。」
「私、これからの自分に自信がついたかも?」
「…て言うか璃里が一番おもしろいよ。」
「そーかい?」

 すっかり上機嫌になった私。すると信号が赤くなり、お姉ちゃんは車を止めた。

「ところで今日の夕ご飯なにかな?」
「そうねぇ…なにがいいかな?」

 お姉ちゃんはこっちを見た。

「お母さんとお父さん旅行行ってるし…いっそ私らこのまま食べに行っちゃう?」

な、なに!?

「それいいの!?」

 私はお姉ちゃんをのぞきこんだ。青信号になったから顔を前に戻して車を発車させるとお姉ちゃんはくすっと笑いながら言った。

「行こ行こ☆私らもエンジョイしないとね。」
「お姉ちゃんナイス!大好きっ!」
「で、目的地は?」
「もちろん…」

 目をキラめかせると言った。

「「倉寿司!」」

 車内にドゥエットがエコーした。

「さすがお姉ちゃん!わかってらっしゃるっ!」
「任せて☆」

 フロントミラーでちらっと私にウインクするお姉ちゃん。今、本気で惚れちゃいそうになりましたヨ?

「それにしてもさっ、ほんとーにお母さんとお父さん仲いーよねー!」

 私は今頃ラブラブにイチャついている二人を想像した。ただいま二人は旅行中。グアムかサイパンかどっかだっけ?よく、子どもほったらかして行くよネ(笑)私は生まれてこのかたお母さんとお父さんが喧嘩したとこを一度も見たことがない。それほど仲がいいのだ。むしろ恥ずかし過ぎておサル様みたくウキィィィィィっっ!と転がり回りたくなるほど家でイチャつくんだよ?!今では大したイチャつき方では動じない免疫がついちまった…ふっ…。なんてね☆

  「もー、一回でも喧嘩なんて絶対したことないだろーねっ。あの万年恋人達はさ!」

 私はビントロ、ハマチ、イクラ、カンパチ、タコ、甘海老、イカ、アジ、マグロ…excと頭の中で一緒に踊りながら言った。

「なーんか、見て見たいなっ!一回でいいから喧嘩してるとこ☆」

 にひっと悪代官みたく笑っちゃったりする。

「…黒いよ、璃里?。」
「お姉ちゃんは見たくないのっ?」
「あはは、もー私はごめんだよ?」
「ぬ、子ども心のナイ…」

私は口をとがらす。

「私はお母さんとお父さんが今の状態で十分嬉しいからねー。」
「目の前でちゅぱちゅぱされても?」
「いーの!だいたいそうけしかけてるの私だもん。」
「え゛?マジ?」
「うん。」

…………お姉サマ?

 じーっとフロントミラーに映るお姉ちゃんを見た。するとその視線に気付いてちらっとフロントミラーを通してこちらを見たお姉ちゃん。

…めちゃめちゃキラキラハイパー純粋無垢な瞳!?(; ̄Д ̄)

さすが私のお姉ちゃん、なかなかヤるっ
こ、こうなったら!

「私もお供致しますっ!瑠実大佐!」
「ついてらっしゃい璃里少尉。」


 こうして大佐と私は強い結束を結び、戦場(倉寿司)におもむいたのであった。

P.S.
私は20皿、お姉ちゃんは30皿しとめた☆



 

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