キーンコーンカーンコーン… 「…時間だねー」 「もうそんな時間かぁ…」 5時を知らせるチャイムが響いた。その後に下校の音楽が流れる。 『下校時間です。まだ教室に残っている人は戸締まりをして下校しましょう』 私はその放送をかたわらに黙々と手を動かしながら教科書に頭をうずめていた。となりでメイも構わずのんきに自分の作業を続けてたから私もそれにならった。 「……」 「……」 「……」 「……」 「…よっしゃ、1セクションクリア…」 「……うーん」 「すみませーん」 そこで女の人がカーテンを閉じながらやって来た。図書館の司書さんだ。 「図書館閉めますよー」 「はーい」 私はそう言うと背伸びをした。 「あーっ!ちょうどキリよくてよかったぁ」 ちらりととなりを見るとメイはまだ問題にとりかかっていた。 「終わりそー?」 「うん、今終わる。」 メイはそう言い、少しシャーペンを動かすと問題を解き終えた。 「あー!この頃下校時刻早いよねっ。」 「だよねー。暗くなるのも早いしさ。」 私はペンケースにシャーペンと消ゴムをしまうとノートと教科書をかさねた。ふと手を見るとノートとすれた所が真っ黒になっていた。…後で手を洗いに行こ。て言うか面倒くさいなぁ…。なんだかうんざりした気分になって溜め息を着いた。 「予習終わった?」 私はメイを見た。 「んー、あともうちょい。ようちゃんは?」 「ぎりぎりで終わった。ったく、竹村の英語めんどくさっ。そして宿題多過ぎ!」 「それそれ!それに授業のスピードが有り得なくない!?」 「だよね!?しかも発音下手っ!」 「あー!思い出しただけでかゆくなるぅっ!更にしゃべる時つば飛ばしてキショいし!」 「加えて顔もキショい!」 「その上性格もキショい!」 「まさしく!」 なぜか話がだんだん違う方向へ進んでる気がするけど、気にしない気にしない☆大体図書館でこんなダルい事しなきゃなんなかったのは、すべて、あいつのせいなんだ! 「メイ!」 「ようちゃん!」 私達はお互いの手をしっかり握りあった。 「打倒、竹村。」 「おう、やったろうぜぃ。」 「お二人さん、図書館、閉めますよ?」 司書さんの声で私達はあわててすぐさま荷物を持って、図書館から退出した。あぶないあぶない。司書さんちょっと怖かったよ…。 * * * 「んーっ!シャバの空気は最高だーっ。」 「あなたはさっきまで刑務所にいたんデスカイ。」 「でも、似たようなもんじゃない?」 「あははっ、まーねっ。」 私はメイを見習って深呼吸をする。んー…気持ちいー。するとメイはふと真顔になってこちらを向いた。 「さっきさ、竹村をとっちめるって言ったけどさ」 「うんうん、竹村を成敗するんだよね。」 「具体的になにをどうする?」 「うーん…」 そこで腕を組んで考えた。なにか、こう、竹村を屈辱させるような いい案はないかと。 「あ、わかった!」 「なになに?いいの浮かんだ?」 「あのね…」 メイ、目がきらきら輝いてるよ。もう、無邪気な子どもみたいだし。ていうか、これは完璧いたずらっ子のするような顔だ。めちゃくちゃ楽しそう。そう言う私もなんだけど♪ 「私、明日、本読みの立候補するっ。そして本気で読む!」 「……なるほど。」 私はにやりと笑った。普段、メイは当てられても適当に片言英語で朗読するのだが、それをやめてしまうと言うのだ。つまり、メイのバリバリのネイティブな朗読によってさり気に、『あんたの英語は英語じゃないんだよ。出直してこい!』と主張するということだ。言っとくけどメイの英語はすごくいい。 「メイ発音いいもんね。」 「やだなぁ…そっちも帰国子女でしょ?」 「ま、ね。となると私はどうするかなぁ…」 そう言いながら私達はコンビニに入った。 メイはすかさず雑誌の並んでいる方へ行くと、週刊ジャンプを開く。メイ、好きなんだよね、ジャンプ。 私はメイをほっといて、おにぎりが売っているコーナーに足を向けた。 うーん…特にめぼしいものはないなぁ…。 続いてお菓子とパンのコーナーに行った。が、やはり特にほしいと言うものがなかった。やっぱさ、コンビニの物って値段高いよ。これじゃあ、なかなか手が出せないし。 私は溜め息をついた。お腹が空いたからどうしてもなにか買って帰りたいのだ。 どうせ、レジのとこにあるポテトとか唐揚げは高いよね…と思いながら私はレジの方をちらっと見た。 …って なにぃぃぃぃ!? 私は自分の目を疑った。シチューまん新発売!?なんと、1個80円!?しかもラスト2つ!! これはめっけものだ! 「すみません、シチューまん2つ下さい。」 私はちょうど今空いたレジにさっと入った。 「はい、シチューまん2つですね。お会計160円になります。」 ああ… ほかほかのシチューまんが私の手の中に… 私はほくほくな気分でお金を払うと、メイのとこに行った。まだ、ジャンプに没頭中デスカ。にやにやしちゃって。 「メーイ。」 「あ、もう終わったの?」 「うん!とりあえず、外でよ。プレゼントあげるから。」 「なに?プレゼントって?」 私はメイをコンビニの外まで引っ張っていくと、ビニール袋に手をつっこんだ。 「じゃん!シチューまん!安かったんだよ〜。」 「わ、おいしそ〜。温かー!」 「私のおごりね。」 「ようちゃん、ありがと!大好き!」 そう言うとメイはシチューまんをほおばった。見るからにおいしそうに食べるメイ。よだれが出てきたよ。 「う〜ん!おいしい!」 「私も食べよ!」 私は自分の分のシチューまんをつかんだ。ほかほと温かさが伝わってくる。そして私はゆっくりとそれを食べた。 放課後まで図書館に残って勉強しなきゃいけなかったけど、今日はすばらしい日だ。こんなに良いものを食べられたんだもん。竹村の成敗方法はまた後で考えることにして、私はシチューまんの味を満喫した。 「〜っ、幸せーっ!」 ―END― |